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中学校歴史教科書に関する
日韓姉妹友好都市要請行動 報告書

●なぜ「姉妹友好都市要請行動」なのか?

一昨年私たちが行った「日韓自治体交流実態調査」では、歴史理解を基盤においた自治体交流が全くと言っていいほどないという結果が出ました。今回、日本の中学歴史教科書の採択が「広域採択」といって自治体レベルや地域レベルで行われるため、姉妹友好都市締結をしている韓国側の自治体から相手側である日本の自治体にむけて、この間交流の凍結や要望書などが送られているとの報道がありました。私たちは、韓国の自治体との姉妹友好都市関係にある日本の自治体が、日韓(日朝)関係史を歪曲した「新しい歴史教科書をつくる会」の教科書を採用することはあってはならないことだと思っています。しかし、日本側のいくつかの自治体では「つくる会」の教科書採択に関する請願を議会で採択するなど、私たちの思いとは逆行する事態が起こっています。そこで私たちは、歴史理解を基盤にした日韓自治体交流を促進するため、日韓両国の姉妹友好都市に要請書を送りました。

●行動内容

日韓姉妹友好都市(84組)、日朝姉妹友好都市(1組=鳥取県境港市と江原道元山市)に要望書を送付、日本側自治体には教育長あてで要望書を送付しました(7月13日〜16日)。「つくる会」教科書に反対する私たちの立場を表明し、採択に際して慎重に対処するよう求めました。また、相手自治体からの要請があった場合、真摯に対応するよう求めました。韓国側自治体には電子メールで、日本側自治体に教科書問題に関して何らかの要請を行ったのか調査をしました(6月下旬から7月中旬)。さらに8月下旬には督促礼状を送付し、採択した歴史教科書名また韓国側からの要請の有無に関して再度アンケートを行いました。

●調査概要

(*特に注釈のないデータはすべて2000年4月現在)

1.対象自治体のプロフィール

1.1.日本側自治体のプロフィール

日本の姉妹都市交流の歴史は、1955年の長崎市とアメリカ合衆国セント・ポール市の姉妹都市締結に始まります。2000年4月1日現在姉妹都市締結総数は1,456件。国別で見るとアメリカ合衆国416(28.5%)と中国266(18.2%)が突出しています。つづいてオーストラリアとつづき、韓国は第4位です。

韓国との姉妹都市締結は日韓基本条約が結ばれた1965年から3年後の1968年萩市(山口県)と蔚山市(慶尚南道)に始まります。2000年4月現在、83都市(7都道府県76市町村)で84組(佐賀県唐津市が2自治体と締結)。また北朝鮮自治体との姉妹都市締結が1都市(鳥取県境港市)あります。ちなみに境港市と元山市は敗戦まで定期航路で結ばれていて、戦後も貿易が続いていました。貿易促進や漁業資源確保などを目的に1992年友好都市締結をしました。

図1.1.1 都道府県・市町村別締結数

締結のきっかけは文化交流、経済交流など様々なものがありますが、都道府県別(表1.1.2)に見ると、姉妹都市締結は、山陰地方や九州地方に多く、環日本海交流や韓国南部と九州地方との交流の活発化の表れだと考えられます。逆に東日本は距離的な問題もあるかもしれませんが、韓国との交流には消極的です。


表1.1.2 都道府県別上位5位・下位5位
(上位5位) (下位5位)
鳥取9 岩手、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、千葉、富山、岐阜、静岡、愛知、三重、大阪、徳島、沖縄0
福岡、滋賀6
山口、熊本5

年代別にみると(図1.1.3参照)、日韓条約締結15年から20年後あたりまでの締結は少なく、1980年代から急速に姉妹都市提携が伸びています。80年代といっても特に後半の伸びが大きく、これは1988年のソウルオリンピックが要因であると考えられます。また、国際化の波の中で、1989年以降自治省(現・総務省)が地方自治体に対して「地域国際化」のための一連の通達を出し、1995年からは地方自治体レベルで「自治体国際協力推進大綱」の策定が始まっています。80年代後半からの「自治体国際化」の流れと、オリンピックが「近くて遠い国」を少しずつ近づけたと言えるでしょう。

図1.1.3 日韓新規姉妹都市締結の推移

1996年に2002年ワールドカップの日韓共催が決定し、1998年には小渕恵三総理大臣(当時)と金大中大統領の歴史的な「日韓共同宣言」が発表されます。しかし、1990年代終盤から急速に韓国との姉妹都市締結が少なくなってきました。経済の低迷による自治体財政悪化など様々な原因が考えられますが、市民レベルでの「韓国ブーム」とは逆に自治体レベルでの韓国への関心は薄らいでいるようにも見えます。このような状況を憂慮したのか、日本・自治省(現・総務省)と韓国・行政自治部は「日韓地域交流促進期間事業計画(2000年度〜2002年度)」を発表し、それに伴い日本政府は「日韓自治体国際文化交流支援事業」を開始し、市町村および公益法人に500万円を上限とした助成金制度を設けました。ワールドカップ開催年であり「日韓国民交流年」である2002年までに、何とか自治体交流を促進させようという試みだと考えられますが、結局今回の歴史教科書問題で水を注されてしまうことになりました。

1.2韓国側自治体のプロフィール

図1.2.1 自治体別締結数

*釜山広域市、晋州市、統營市は2自治体と公州市は3自治体と慶州市は4自治体と締結

図1.2.2 地域別締結数

韓国の自治体は、中央政府と頂点とし、広域自治体としての道・特別市・広域市があり、その下部に基礎自治体としての市・郡・自治区が存在するという構成になっています。韓国の行政機構についてはここでは詳述しませんが、締結の理由は必ずしも自治体の規模が似通っているということだけではありません。また、図1.2.2でわかるように、地域では圧倒的に慶尚南北道が全体の約半数を占めます。慶尚道は日本に一番近く、歴史的に様々なつながりがあります。

表1.2.3 ワールドカップ開催自治体のうち、日韓姉妹都市締結のある自治体
韓国8/10ソウル、仁川、水原、大邱、釜山、蔚山、大田、西歸浦
日本0/10なし

表1.2.4 日韓姉妹都市締結希望自治体(2001年8月現在)
韓国21安城市、九里市、天安市、麗水市、巨済市、南揚州市、軍浦市など
日本2牛窓町(岡山)、昭和村(福島)

さて、2002年を目前にして韓国の自治体は、日本の自治体に対して大いに注目をしているようです。表1.2.4をみてもわかるように、韓国側の締結希望自治体は21自治体に上っています。しかし、日本の自治体は牛窓町と昭和村の2自治体にとどまっています。ちなみに牛窓町は江戸時代の朝鮮通信使ゆかりの地です。

ただ、韓国側の締結希望自治体のほとんどが日本側自治体との経済交流を希望しており、ここでも日韓自治体の温度差が表れていると言えます。

一方でワールドカップ開催自治体では、日本側の自治体に締結自治体がひとつもありません。政府主導で開催地相互の姉妹都市締結を試みたようですが、実現はしていないようです。一昨年日本側開催地のある自治体に電話で問い合わせをしたのですが、「当市では、姉妹都市締結が飽和状態なので、新規の締結は控えております。」という返答が帰ってきました。当初から地域の経済活性化が第一義として掲げられてきたワールドカップではありますが、特に日本側自治体に「日韓共催」ということの意義について十分な理解がなされているかは、大いに疑問です。


2.日本側自治体アンケート結果

2.1アンケート回答自治体

図2.1.1 日本側アンケート回答自治体

図2.1.2 アンケート回答自治体の内訳

*未送付は佐賀県佐賀市

アンケートは2回目の督促も含めて、63.1%(53自治体)の回答を得られました。なお、7都道府県からはすべて回答をいただきました(図2.1.2)。


2.2 中学校歴史教科書採択に関するアンケート

図2.2.1 回答自治体の内採択した歴史教科書について回答があった自治体

文部科学省が定める来年度の中学歴史教科書採択の期限が8月15日だったため、1回目のアンケート(7月13日〜16日実施)ではほとんどの自治体が採択作業を終了していないか、公表を控えていました。そのため、1回目のみ返答をいただいた自治体の多くの採択教科書は不明です。しかし、回答自治体中73.6%の回答をいただきました。これは姉妹都市締結自治体全体(83自治体)からみても46.9%の回答率になります。


図2.2.2 市町村:採択した中学校歴史教科書(回答数34)


表2.2.3 都道府県:採択した中学校歴史教科書(回答数7)
都道府県・回答者
(敬称略)
採択教科書備考
東京都
中村(指導部管理課教育係)
教育出版(都立盲学校)、帝国書院(都立ろう学校)、日本書籍(都立肢体不自由養護学校)、扶桑社(都立病弱養護学校、都立青鳥養護学校梅ヶ丘分教室)  
神奈川県
志摩尚平(教育部義務教育課)
大阪書籍(県立盲学校)、日本書籍(県立聾学校)、日書・東書・教育・清水・帝国(県立病弱養護学校)  
山梨県
角田修(義務教育課)
採択地区(6地区)ごとで採択(東京書籍1、教育出版5) *県採択はなしという回答
鳥取県
担当者不明
7月下旬決定予定 *2回目アンケートに回答なし
島根県
河井克典(高等教育課特殊教育室指導主事
東京書籍  
山口県
三輪研一郎(指導課特別支援教育班課長補佐)
8.16以降発表 *2回目アンケートに回答なし
熊本県
島村正明(義務教育課指導主事)
県内各採択地区の一覧を提示:教育出版(熊本市、天草)東京書籍(宇城、玉名、鹿本、菊池、阿蘇、上益城、八代、球磨)帝国書院(芦北) *県採択はなしという回答

市町村で回答があった34自治体のうち、採択された歴史教科書で圧倒的なシェアを占めていたのは東京書籍でした。

この間の報道などでご存知の方も多いと思いますが、「従軍慰安婦」の記述がほとんどの教科書から消えました。ところが日本書籍のみが「従軍慰安婦」の記述を残しました。「従軍慰安婦」の記述を残したことで、日本書籍はこの間、扶桑社の歴史教科書との対極に位置付けられるようになり、多くの教育委員会で日本書籍を敬遠する動きが出ていたようです。先日のNHKスペシャルでも報道されていたように、東京地区でも日本書籍は従来の発行部数を大幅に減らしたようです。私たちの調査でも、日本書籍を採択したのは、唐津市(佐賀県)のみでした。

私たちユースフォーラムの「歴史認識プロジェクトチーム」(戦後補償運動に関わる青年らで構成)の2002年度中学校歴史教科書比較作業(2001年7月)によると、日韓関係史に関しては、「従軍慰安婦」に関する記述を除けば、現在使用されている歴史教科書と大きな差異はないという報告が出ました。また、日本書籍の教科書が他の教科書よりも日韓関係史に関して多くの記述があったわけではなく、むしろ扶桑社の対極に置かされて煽りを食ってしまったようです。

都道府県の方では、東京都が都立病弱養護学校と都立青鳥養護学校梅ヶ丘分教室で、扶桑社の「新しい歴史教科書」を採択しました。東京都教育委員会の決定には多くの批判が寄せられたところですが、一方で神奈川県は、県立病弱養護学校では5つの教科書を採択しています。神奈川県の回答によると「県立病弱養護学校においては、入院前、退院後の自宅学区での教育を保障するために、県内全市町村で採択された全ての教科書を採択しております。」ということでした。神奈川県の採択理由はもっともなものであると考えられますが、だとすると同じ病弱養護学校で、東京都はなぜ都内で採択のない扶桑社だけなのか、疑問が残るところです。

また、私たちが当初から危惧していた、「新しい歴史教科書をつくる会」などによる地方議会での請願採択についてですが、東京都では請願が採択されていないため、請願が採択された自治体での扶桑社の採択はひとつもなかったことになります。

(参考資料)日韓姉妹友好都市における「新しい歴史教科書をつくる会」
「教科書改善連絡協議会」などの教科書問題での請願・意見書採択自治体
*「子どもと教科書全国ネット21」調べ 2001.3.21現在

請願・意見書は教科書採択に際して、現場の教師の意見ではなく、教育委員の権限を強めるよう求めたものです。ちなみに日韓姉妹友好都市における採択自治体は以下の通りです。神奈川県、鳥取県、島根県、熊本県、埼玉県狭山市、東京都杉並区、滋賀県大津市・近江八幡市・守山市、鳥取県米子市・境港市・東伯町、鹿児島県大口市の13都市です。


2.3 韓国側自治体から何らかの要請があったか?

図2.3.1 韓国側自治体から何らかの要請があった日本側自治体

韓国側から要請があった日本側自治体の回答をみると、以下のように分類ができます。

 (1)教科書問題に関して要請があった。(要請書・親書・議会決議・議会書簡など)
 (2)要請があった上で、交流の中止の申し入れがあった。
 (3)要請があった上で、交流を継続した。
 (4)扶桑社の教科書を採択しないよう、申し入れがあった。

ただし、要請があった中には、具体的な要請の内容に関して記述していないものもあり、厳密な分析ではありませんが、この分類に沿っていくつかの回答を紹介してみたいと思います。


(1)教科書問題に関して要請があった。(要請書・親書・議会決議・議会書簡など)
自治体名回答日回答内容(原文のまま)
鳥取県7/23江原道から教科書採択に関する要望が届いた。市町村立学校の教科書採択は、市町村教育委員会の権限であり、その採択状況を見守りたい。
大田市
(鳥取県)
7/19直接にはありませんが、大田市議会議員一行(8人)が本年5月29日から6月1日に、大田広域市議会を訪問した際の会食時に、大田広域市前副市長あるいは市議会議長から、「教科書問題については、お互いが共通の歴史認識をもつことが韓日両国の友好につながる」との発言があったとの事。
淀江町
(鳥取県)
7/19高城郡から丁重なる要望を受けとっております。本町といたしましては両町・郡の友好が損なわれないよう、また、交流が永く続き発展するよう祈っております。
大口市
(鹿児島県)
8/22(1)南海郡議会から「日本中学歴史教科書の歪曲是正要求に関する決議文」が大口市教育長へ送付されてきた。(発送日平成13年4月24日)(2)このことについて市教育委員会で趣旨の理解に努め、大口市議会の全員協議会で教育長が説明した。(3)教科書の検定内容については文部科学省の仕事であり、市教委は見本の中から市内の生徒の学習に最適なものを選択する立場にある。(4)夏休みに予定していた南海郡高校生との交流は延期になっているが、8月大口市少年サッカースポーツ少年団の交流ができて喜んでいる。今後も大口市との交流をお願いしたい。(5)8月17日(金)南海郡議会へは、教科書採択について大口市教委の考え方、採択までの経緯については大口市教育長が返事の手紙を送付した。

様々なかたちでの要望があったようですが、扶桑社の教科書に関して直接言及していないものも多かったようです。大口市に宛てた南海郡議会決議(次項参照)は、扶桑社の教科書に対して批判していますが、採択しないで欲しいとの要望はしていません。また、大田市のように非公式な要請も多くの自治体であったようです。


(2)要請があった上で、交流の中止の申し入れがあった。
自治体名 回答日 回答内容(原文のまま)
狭山市
(埼玉県)
8/20 統營市国際交流協会より狭山市国際交流協会との交流を保留したい要請がありました。狭山市は8月20日からの中・高校生による統營市親善訪問を中止しました。
蒲生町
(滋賀県)
7/19 (場岩面)場岩中学校長から「貴国の生徒達が本校を訪問することになっていますが、こちらの都合がよくないですので、申し訳ありませんが、交流の日を延ばしていただきたいと思います。」とのFAXを受けました(7月18日)。このことを受け、今年度8月1日からの朝桜中学校生徒の韓国派遣は中止と決定しました。
宗像市
(福岡県)
7/16 今年度7月21〜23日にかけて行われる予定のスポーツ交流と9月7日〜10日にかけて行われる予定の小学生交流訪問について、中止の旨の連絡(FAXを含む)が入っています。なお7月13日付けで、金海市長から宗像市長あてにFAXが送付されています。内容としては、両市および両国の善隣友好関係を継続発展させるために、宗像市長の積極的な関心と援助がなされることをお願いします、という文書です。また、宗像市側の親書としては、友好関係の継続をねがう文書を送付する予定です。

今回最も日韓両国市民を悲しませた出来事は、「交流の一時中止」という出来事でした。8月に大阪で行われた第5回ユースフォーラムに参加した韓国の青年たちも中止という事態をたいへん憂慮していました。

交流の中止や凍結というのはひとつの手段としてありうるものだと考えられますが、自治体レベルで歴史理解を醸成して行くという試みがないままに、交流や対話を断絶することは憂慮すべきことです。ただ、このことは韓国側自治体に責任があるとは考えるべきでなく、積極的な打開策を取れなかった日本側自治体に反省すべき点があると思います。


(3)要請があった上で、交流を継続した。
自治体名 回答日 回答内容(原文のまま)
本荘市
(秋田県)
8/23 問題の歴史教科書を採択しないようにとの要請がありましたが、その方向で努力していることを伝えました。本荘由利青年会議所主催の日韓友好交流使節団も8月17日〜20日の日程で訪韓し、梁山市の中学生との交流等に多くの成果を上げて帰って参りました。
信楽町
(滋賀県)
8/31 別紙京都新聞記載を参照してください。(以下京都新聞010724抜粋)「京畿道利川市は、別の道を選んだ。陶磁器を縁に滋賀県の信楽町と9年前に親善友好関係を結び、日本人観光客も多い。苦悩の末交流維持を決めた。」

一方、交流を継続した自治体もありました。本荘市(秋田県)は、「問題の歴史教科書を採択しないようにとの要請」に対し、真摯な対応した上で、交流を継続したようです。


(4)扶桑社の教科書を採択しないよう、申し入れがあった。
自治体名 回答日 回答内容(原文のまま)
山梨県 7/19 平成13年7月18日に7月12日付けの韓国忠清北道議会の「歪曲された歴史教科書が山梨県の学生の教材にしないよう積極措置を求める」書簡が山梨県議会に届いたところであります。
出石町
(兵庫県)
7/26 出石町では、7月24日から27日まで、小学生による国際交流事業学習団の慶州市訪問を予定しておりましたが、7月16日に慶州市から交流事業の中止するとの電話連絡が入り、訪問団の派遣を急遽取りやめました。1992年から続けてきた小学生の交流が途切れたことは、たいへん残念です。慶州市長からは、7月18日付で文書がFAX送付されてきており、「扶桑社の教科書を採択しないように」との申し入れ並びに扶桑社教科書の問題点の指摘を受けております。出石町としても、1991年11月7日に両市町で結んだ友好親善交流宣言の趣旨を尊重し、韓国との交流を深めていきたいと考えております。昨日開催された教育委員会においても、慶州市長の申し入れ内容を教育委員にも伝え教科書決定した次第です。*慶州市からの要望「扶桑社の教科書を採択しないように」→(対応)扶桑社の教科書は採択しない。今後も住民・学生の交流を進めていくことにより、相互理解を深めていきたい。
三次市
(広島県)
8/22 泗川市から「新しい歴史教科書をつくる会」が執筆した教科書を採択しないよう建議分が送付され、採択事務終了後、泗川市へ採択の結果を返答しています。
防府市
(山口県)
8/21 (1)扶桑社の「新しい歴史教科書」の使用に反対する。(2)教育・文化・スポーツの交流は継続したい。上記2点について平成13年8月17日教育長名で返書を送付した。
熊本県 9/5 (1)忠清南道知事・沈大平氏「熊本県内で、問題となっている教科書が採択されないようお願いする。」熊本県知事のコメント「教科書検定に合格した教科書の採択に関し、県は権限はない。公正中立の立場から、特定の教科書の採択に関して働きかけはできない。」(2)忠清南道教科書訪問団(代表・鄭秀溶全国農民会忠清南道議長)「被害者の立場を考慮しない教科書が採択されないようお願いする。」熊本県教育次長「教科書を採択するのは、市町村教育委員会である。県は、市町村教育委員会が採択の時に利用する選定資料をつくることにより指導助言援助をする権限をもつだけである。」

今回のアンケートでは、扶桑社の歴史教科書採択に反対する要請をした韓国側自治体が多くみられました。中学歴史教科書に対する「再修正要求」や全面的な日韓関係の見直しを求めた決議案など、韓国政府・国会による一連の行動が自治体の後押しをした部分があると考えられます。しかし、必ずしも韓国側自治体の行動は横並びではないということに注目したいと思います。

また出石町(兵庫県)のように、今回の歴史教科書問題への対応に関して「友好親善交流宣言の趣旨を尊重」したいとしている自治体もあります。「宣言」に歴史問題がどのように言及されているのか、今後改めて調査をしたいと考えています。


(その他)

○国へ要望書を提出した。
自治体名 回答日 回答内容(原文のまま)
唐津市
(佐賀県)
8/22 西歸浦市は市長様から、麗水市は麗水市第2の建国汎国民推進協議様からそれぞれ書簡が参りました。当市では市長から外務大臣並びに文部科学大臣あてに適切に対応していただきたい旨の書簡を送付いたしました。

日本側自治体の対応で目を引いたのは唐津市(佐賀県)の対応でした。韓国側の要請に対する日本側の対応は、採択権限は自治体レベルであるが検定内容に関しては国の仕事である、というものが多かったように思います。しかし、今回の問題で特に曖昧模糊としていたのが日本政府の対応であり、唐津市のように国に善処を求める対応は当然であるし、もっとあるべきであると考えます。ちなみに唐津市は、西歸浦市と麗水市という2つの自治体との姉妹都市締結をし、今回の調査の中で唯一、日本書籍の歴史教科書を採択しています。


○韓国側の議会決議が教育委員会に届いていない。
自治体名 回答日 回答内容(原文のまま)
杉並区
(東京都)
7/23
8/23
瑞草区から教育委員会に要請を受けておりません。

逆に不信感を感じたのは杉並区(東京都)の対応でした。杉並区は区長自身が扶桑社の教科書を支持しているとの噂があり、扶桑社の歴史教科書をめぐって最後まで採択作業が難航したところです(実際は帝国書院を採択)。

姉妹都市である瑞草区(ソウル特別市)は4月の段階で議会決議(次項参照)を上げているのですが、2度にわたるアンケートにも関わらず杉並区教育委員会は「要請を受けていない」との返答でした。通常、相手側自治体の決議は、市長や区議会宛てで送付すると考えられます。だとすれば、縦割り行政の弊害か、もしくは教育委員会へ通知をしなかったということになります。いずれにしても、杉並区教育委員会は瑞草区議会決議を本当に知らなかったのでしょうか。姉妹都市に対する杉並区の姿勢が問われるところです。


2.4 議会で決議をあげ、日本側自治体に要請したか?

韓国側の歴史教科書問題における議会決議に関しては、自治体のホームページを通じて調査をしました。こちらの調査は多少難航しましたが、3つの自治体から決議文を送付していただきました。

  • 忠清南道(熊本県と締結)
  • 済州道西歸浦市(佐賀県唐津市と締結)
  • 慶尚南道南海郡(鹿児島県大口市と締結)

なお、他の市民団体などの調査で3つの自治体決議をあげていることがわかっています。

  • 京畿道富川市(川崎市)
  • ソウル特別市瑞草区(東京都杉並区)
  • 京畿道議政府市(新潟県新発田市)

これら自治体の中で、3つの自治体(熊本県、大口市、杉並区)は「つくる会」などの議会請願を採択しています。韓国側自治体もこういった相手側の状況をある程度わかった上で、議会決議をあげているのではないでしょうか。以下、4つの自治体の議会決議を紹介します。


(1)富川市(京畿道)

日本の歴史教科書歪曲に対する是正促求決議文

富川市議会は、日本が若い世代に正しい歴史観を育てることにより、平和と民主主義を熱望する国際社会の期待に応じ、韓国をはじめとするアジアの国家と同伴者的な善隣友好関係を発展させていかなければならないという認識のもと、日本で進められている過去の歴史に対する縮小・歪曲の動きと関連して、深刻な憂慮を禁じえない。

特に、最近2002年度用の中学校歴史教科書の検定過程で日本政府の検定を通過した一部教科書が、今なお自国中心主義的な軍国主義史観に立脚し、過去の歴史の誤りを合理化し美化する内容を含んでいることに対し、80万富川市民と共に遺憾の意をこめて次のとおり決議する。

1. 私たちは、日本政府が1982年に歴史教科書検定基準として発表した「国際理解と国際協調の見地から必要な配慮」という原則および1995年村山総理の「戦後50周年特別談話」と1998年金大中大統領の訪日時に採択された「21世紀に向けた新たな日韓パートナーシップ共同宣言」で明らかにしている歴史認識を土台に、最近検定を通過した歴史教科書の過去の歴史の縮小・歪曲が是正されるよう、日本政府で再検定を通じた措置と今後の歴史歪曲を根本的に防止するための対策を講じることを強力に促求する。

2. 大韓民国政府は日本の過去の歴史の縮小・歪曲の動きに対し、国民的な公憤を勘案し、歴史歪曲が是正されるまで持続的な努力と恒久的な対策を準備することを促求する。3. 富川市と友好関係を結んでいる日本の川崎市議会が本決議に対する支持と過去の歴史の縮小・歪曲の是正のための実質的な活動に共に参与することを促求する。

2001年4月24日
富川市議会 議員一同

(2)南海郡(慶尚南道)

"日本の歴史教科書歪曲"に対する私たちの立場

日本が起こした過去の帝国主義的侵略戦争を『アジア 解放戦争』と歪曲して記述し、中学校用の歴史教科書8種を2001年 4月10日に検定通過させた日本政府(文部科学省)の行為は不当である。これは人類に行った日本の戦争犯罪の事実を否定するものであり、歴史の歪曲は歴史と人類の前では正当化することができない。よって私たち6万南海郡民を 代表する南海郡議会は、日本の歴史教科書歪曲の事実に対して深い遺憾を表示するとともに、国際姉妹都市である日本国大口市に対しお互い友好的な関係であることを前提とした上で次の通り私たちの立場を伝える。

第一に、 "新羅、 百済の日本朝貢"に対して記述した個所は、日本の恣意的な優越性を示すものであり、過去に韓国の主権を蹂躙した不当性を正当化しようと狙うものであり、歴史歪曲を古代史まで拡大してねつ造したものであり、是正するのがふさわしい。

第二に、 "朝鮮の近代化及び開発等"に対して記述している部分では、甲午更張時の軍制改編は決して朝鮮の近代化を助けるために行われたものではなく、朝鮮併合後に鉄道と灌漑施設 整備及び土地調査を行ったのも朝鮮を開発しようとしたことではない。日本帝国の朝鮮に対する経済的収奪政策の偽りを誇張しようとするものなので、正しく記述されなければならない。

第三に、 "従軍慰安婦に対する問題認識"の削除に対して、太平洋戦争当時の従軍慰安婦など婦女子暴行事実を削除したことはいまだ挺身隊のハルモニ(おばあさん)がこの時代に生きていること自体についても看過しようとするものであって、ひいてはこの時代の痛みを徹底的に隠そうということである。日本は歴史的事実と良心の前に正々堂々とあらねばならない。

第四に、 "日帝の朝鮮侵略"を"進出"に、 また江華島条約の武力性を美化して表現し、乙巳条約締結が当時のヨーロッパ列強の指示を受けたものとするとともに、 3.1独立運動と関東大震災時の朝鮮人虐殺と犠牲者数を削除する等、その当時の事実を否定して隠蔽・縮小したことは望ましくないことである。事実をありのまま記録して、真実の歴史を後世に伝えるための賢明な措置を講じるべきだ。

このように我々は日本の歴史教科書の歪曲された部分が是正されることを強力に希望する。どの国であれ、 誤った 歴史記録と歪んだ歴史教育観を指示はしないだろう。日本と同様の戦犯国家のドイツは既に過去の事実を認めて、 関連被害国に対して 謝罪の立場を維持している。だが、これとは対照的な日本の歴史教科書の歪曲事実は、決して正当化することはできない。我が郡と姉妹都市である日本国大口市は自国の誤った歴史記述と事実が他の歴史教育観を排除していることから、正しい歴史を記録して誤った歴史観を正しく立て直すために私たちの立場を積極的に支持してくれることを要請するものである。

2001年 4月24日
南海郡議会議員一同

(3)瑞草区(ソウル特別市)

日本政府の歴史教科書歪曲の中断を求める決議

ソウル特別市瑞草区議会は、日本政府が過去の侵略行為に対する隠蔽・縮小・歪曲の中学校歴史教科書に対して是正することを強力に求、め、次のとおり決議する。

1.ソウル特別市瑞草区議会は、日本政府が2002年から使用する中学校歴史教科書検定内容のうち、過去の歴史の隠蔽・縮小・歪曲された項目を即時是正するよう強力に措置し、再検定することを積極的に求めるところである。

2.ソウル特別市瑞草区議会は、日本の屈折した過去の侵略行為の歴史教育は、また再び日本の不幸な結果を自ら招くことであり、これに対し大いに悟り、覚醒することを望み、真実に基づいた歴史観の確立により日本の次世代が正しい歴史教育を通じて未来の望ましい韓日関係を先導する役割を遂行できるよう、措置することを望むところである。

3.ソウル特別市瑞草区議会は、日本政府の歴史教科書歪曲は韓日両国間の善隣友好関係と同伴者的協力関係を大きく毀損するだけでなく、日本の国際的な孤立を自ら招くものであることを、厳重に警告するところである。

4.ソウル特別市瑞草区議会は、韓国政府が日本の文部科学省の検定を通過した歴史教科書問題を韓日外交事案と連係させないなど、日本の過去の帝国主義被害対象国の中でもっとも消極的な外交政策を繰り広げていることに対して、これは国民感情を無視するものであり、今後確固たる対応政策で強力に対処することを厳重に求めるところである。

5.ソウル特別市瑞草区議会は、日本が歴史教科書歪曲を始まりとして日本社会の右傾化を加速化させ過去の軍国帝国主義への回帰を試みようという意図への疑懼心を誘発しうることを警戒するよう望み、東アジアの平和共存のため、日本の役割に対して心から熟考することを望む。

このように瑞草区議会は、日本の中学校歴史教科書の歪曲および美化行為に対して、40万瑞草区民と共に強力に是正を求めるところである。

2001年4月23日
ソウル特別市瑞草区議会 議員一同

(4)忠清南道

『日本歴史教科書歪曲記述にともなう是正促求』
建 議 案

我々は最近日本の「新しい歴史教科書をつくる会」が2002年版中学校歴史教科書の内容の中で日帝の侵略行為(36年間)と加害の事実を全的に否認したり歪曲して記述したことを日本政府が承認しようとする動きに対し、衝撃と驚きを禁じ得ない。今、韓日両国は過去の不幸な歴史を克服して未来指向的な関係を定立するために多角的な努力がより一層必要とされており、最近の日本の歴史教科書歪曲事件は両国の友好協力とパートナーシップを期待する私たち韓国民の心を大いに傷つけている。

しかも日本政府が歪曲された歴史教科書を認めようという姿勢は、民官が組織的に歴史を歪曲しようとするものであり、われらはこれをはなはだ憂慮し、慨嘆せざるをえない。

また歪曲された教科書で習った日本の次の世代は韓国を含めた周辺国とのパートナーシップを形成出来なくなり、以後韓国も次世代に対する歴史的価値観の混乱を招くようになると思われ、歪曲された日本史が世界的に誤用される場合には当該国家の位相にかなりの阻害要因として作用することになるだろう。

したがって我々忠清南道議会議員一同は深い憂慮を表すと共に、次の通り強力に建議するものである。

第一に、日本政府は韓日両国のパートナーシップを阻害する歴史教科書歪曲を直ちに中断し、これが是正されるように政府次元における積極的な解決策を講じなければならない。

第二に、日本政府は正直に自己反省と悔悟を自らに課しており、真の和解を成しげるのだという点を深く認識できるように、周辺国との協力体制を構築して共同で対応するべきだ。

第三に、日本の歪曲された歴史内容を論理整然と整理し、全ての教育機関に伝えるとともに、わが国の学生と国民にそれを知らせて国民的共感を形成すべきである。

第四に、これから育つ次世代に民族の精神をよりしっかり養える内容を教育過程に加えることで、正しい歴史認識が常に息づく社会を創らねばならないだろう。

上の事項に対する各部処の早急な対策作りと政府次元での多角的な外交努力を強力に推進してくださることを忠清南道議会議員一同は強力に建議する。

2001年3月20日
忠清南道議会議員一同

いずれの議会もそれぞれの視点で決議をあげ、日本側に対して強く是正を求めています。中でも注目すべきは、「川崎市議会が本決議に対する支持と過去の歴史の縮小・歪曲の是正のための実質的な活動に共に参与することを促求する。」(富川市議会決議)や「大口市は自国の誤った歴史記述と事実が他の歴史教育観を排除していることから、正しい歴史を記録して誤った歴史観を正しく立て直すために私たちの立場を積極的に支持してくれることを要請するものである。」(南海郡議会決議)といったように、最後に日本側自治体に共に考え、行動することを求めているところです。特にこの問題に関して、富川市議会は議員団を川崎市に派遣しています。

このような韓国側自治体からの呼びかけに、川崎市や大口市はどのように応じたのでしょうか?積極的な動きは未だ聞こえてきません。

●まとめにかえて

「新しい歴史教科書」の登場により、歴史教科書の問題が改めて問われることになりました。「新しい歴史教科書」が検定を通過し、採択へのその場を移したときに、多くの市民団体の反対運動がおこりました。結果的に「新しい歴史教科書」の採択は公立校では東京都と愛媛県の一部ということになりました。しかし一方で、皮肉にも、この教科書の登場によって、日本の歴史教科書そして歴史認識をめぐる問題点が明らかになったということは否定しがたい事実です。

私たちは、今回の教科書問題を「日韓市民交流の試金石」ととらえました。1998年の「日韓共同宣言」や2002年の日韓共催ワールドカップ開催といったように、90年代の戦後補償問題の噴出を経て、日韓関係は新たな段階に入るかに見えました。ところが、今回の歴史教科書問題で、その基盤(とりわけ日本側の基盤)はあまりにも脆弱であることが露呈してしまいました。

1999年に私たちが行った「日韓自治体交流実態調査」では、「植民地支配の歴史」や「在日コリアンの人権」という、韓国に対する歴史認識の根幹に関わる部分に関しての取り組みが全くといっていいほど見られませんでした。それは、これまでの日韓自治体交流が、両国間に横たわる最大の障壁をさけて、交流を続けてきたことを如実に表しています。

ところが、今回の問題で、韓国側自治体は積極的な対応をしてきました。マスメディアでもクローズアップされたように、中には交流を中止・凍結する自治体も表れました。しかし、富川市や南海郡などにみられるように、共に考えて行こうと呼びかけを行った自治体も多くあったということを私たちは注目すべきだと考えます。韓国の地方自治体は急速に民主化しており、今や私たちと共に手を携えるべきパートナーなのです。

今回の調査を通じて、日韓自治体交流の新たな萌芽を見ることができました。国家に頼るだけでなく、自治体が市民とパートナーシップを結ぶ中で、様々な問題を解決して行くという時代が到来しつつあるのではないでしょうか。現にヨーロッパでは市民と自治体のパートナーシップが結ばれ、人権・平和・環境をはじめとした様々な活動が展開されているそうです。

またそれは一方で、私たちNGOにもボールが投げ返されているとも言えます。自治体施策への批判だけでなく、具体的なかつ実行性のある政策を提案して行かなければなりません。ワールドカップはもう目の前まで迫っています。私たちが韓国の市民とどのように生きていかなければならないのか。今回の歴史教科書問題は、そのことを強く私たちに求めているのです。

2001年11月4日
<日本―在日―韓国>ユースフォーラム
日韓姉妹都市要請行動プロジェクト
孫明修、琴玲夏、金朋央、金成浩、小田切督剛、石川明宏
報告書執筆:石川明宏

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