e-mail

長居陸上競技場チェック 報告

作成:石川(在日の戦後補償を求める東京の会)
調査済み・予定の競技場の一覧はこちら

●日時・場所

・2001年8月3日(ユースフォーラム2001バリアフリーフィールドワーク開催中)

・大阪・長居陸上競技場

●バリアフリーチェックのシステム

日韓ワールドカップ開催地バリアフリーチェックは2001年の8月から12月までワールドカップの開催地計20都市で開催します。日本側プロジェクトチームは私たちユースフォーラム・ジャパンと(障害者インターナショナル)DPI日本会議です。韓国側協力団体は、ユースフォーラム韓国準備委員会、障碍友権益問題研究所です。バリアフリーチェックでは基本的に、各自治体の空港や主要駅から競技場までのアクセス、また競技場施設の整備状況について障害者の方々とともにチェックします。

●主要ターミナル駅 天王寺駅からのアクセスチェック

今回のフィールドワークは、「日韓ワールドカップ開催地バリアフリーチェック」の一環として行いました。主要ターミナル駅であるJR/大阪市営地下鉄天王寺駅から長居陸上競技場までのコースです。

当日はDPI日本会議加盟の地元団体「障害者の自立と完全参加をめざす大阪連絡会(障大連)」の筒井さんや大城さん、尾上さんなど介助者の方を含め10名の方が参加してくださいました。また、ユースフォーラムやプロジェクトの参加者は23名で、合計33名の参加者がありました。

JR天王寺駅中央改札前に朝9時に集合し、JR班と市営地下鉄班2班にわかれ行動を開始しました。JR班のリーダーはDPI事務局の丸山武さん、市営地下鉄班のリーダーはDPIボランティアスタッフの岡田智恵子さんです。ともに車イスのユーザーです。また、韓国からの参加者には車イスに乗っていただき、車イスの視点でチェックを行ってもらいました。

●ずさんさが目立つJR長居駅

JR班はJR天王寺駅構内をチェックし、JR阪和線でJR長居駅へと向かいました。JR天王寺駅は2層構造になっており、地下1階部分に向かうエレベーターはひじょうにわかりにくいところにあることがわかりました。また、車イストイレはありましたが、男女別でなくドアが重くてあけにくくなっていました。また、丸山さんが阪和線に乗ろうとすると、駅員に次の電車を待つようにと止められました。JR側からすれば駅員の介助体制が整ってからということのようですが、乗れると思って乗ろうとする障害者を駅員の都合で止めるのはいかがなものかと思いました。

次にJR長居駅ですが、ここでは駅員の対応の悪さと設備のずさんさが目につきました。JR長居駅は地上駅であるため、陸上競技場側出口に出るためには階段を上らなければなりません。階段の脇にはスロープがあり、線路を渡って出口に向かうのですが、JR側が言うところの「スロープ」は実質63〜65センチしかなく(通常90センチ以上必要と言われているそうです)、しかも階段の脇ですぐ横は線路になっています。つまり、狭いため転落の可能性がある上、転落すると命の危険もあるということなのです。駅員は「みんなが通っているから、危なくないから大丈夫」と言っていましたが、これでは納得がいきません。  障大連の尾上さんによると、長居駅の「スロープ」はもともと駅の売店の搬入用で使われていたののようです。JR西日本は「2010年に長居駅が高架駅になるのでそれまで待ってほしい」という説明をしているそうですが、2002年のワールドカップはもとより、落選した2008年の夏季オリンピック・パラリンピックもこの状態で迎えるつもりだったのでしょうか?ちなみに地元の車イス利用者のほとんどは手前の鶴ヶ丘駅(地上駅で改札からスロープになっている)から降りるそうです。

●ところどころに抜け落ちている障害当事者の視点〜市営地下鉄

地下鉄天王寺駅の御堂筋線は西側と東側の2つの改札口があります。JRからエレベーターを利用して西側改札口へ行くには、いったん道路を渡ってあい向かいの近鉄百貨店かアポロビルを通らなければなりません。地元の方は東側改札を利用するそうなのですが、これも駅ビル「MIO」のエレベーターが一番便利という、ちょっとおかしな構造になっていました。障大連の方の話では、これまで「MIO」のエレベーターは駅ビルのエレベーターのため終電まで動いていなかったそうです。しかし、数年前に交渉で5時から24時まで利用できるようになったようです。市営地下鉄はJRに比べるとまだましに見えましたが、障害者用のトイレの清掃が行き届いてなく、ティッシュペーパーの自販機が車イスの方の手に届かない位置にあるなどの問題点もわかりました。また、これは当事者の方の感想ですが、市営地下鉄は車イスの方が乗る際、駅員が簡易スロープを用意するのですが、当日は駅員が乗る車両を指示してきました。普段は乗りたい車両に乗っているのに、一方的に指示されるのは納得がいかないという感想をおっしゃっていました。ここでも利用者の視点を感じることになりました。

●問題点が続出した長居陸上競技場

さて長居陸上競技場内のバリアフリーチェックですが、当日は大阪市ワールドカップ推進室、大阪市施設整備部、長居陸上競技場、2002年FIFAワールドカップ大阪市開催推進委員会の方々総勢10名ほどの方々が案内してくださいました。

長居陸上競技場は開催地の中で最も歴史が古い競技場ですが、1996年に大規模な改修工事を行っています。地上5階で50,000人が収容できます。しかし、様々な問題点がでました。車イストイレが車イス席255席に対して8ヵ所しかなく、また行きにくい場所に設置してありました。ちなみに横浜国際総合競技場は車イス席147席に対し男16女16となっています。また車イストイレのドアは自動でなく重い引き戸になっていました。

また大きな問題となったのは車イス席とそこまでの通路でした。車イス席は2階部分の通路に面して設置されていますが、通路の前の観客が立つと試合が全く見えません。障大連の方で長居がホームのセレッソ大阪の試合をよく観戦するという方がいらっしゃったのですが、やはりサーポーターが立つと試合が見えず、中には介助者に上の席に移動してもらっているという方もいました。ちなみに欧米では多くの競技場が普通席をはずせるようになっており、どこでも自由に観戦できるようです。

さらに問題になったのが、車イス席の前の通路です。車イス席の横には上の席から階段があるのですが、上からの階段が1段通路側に出っ張っているのです。また下の階段には何の転落防止装置もなく、電動車イスの方が実際に落ちそうになりました。これについては多くの参加者から不安の声があがり、新聞でも報道されました。市側には改善を求めました。

他にも様々な指摘があったのですが、驚いたのは市職員の方の返答でした。実際に改修の際に当事者の意見を聞いたのかという参加者の問いに、隣接する「障害者スポーツセンター」の先生の意見を聞いたと答えました。スポーツセンターの先生は必ずしも当事者でなく、参加者の方々は唖然としていました。ここでも障害者のための施設のはずなのに、障害当事者の意見が届いていないという現状が明らかになりました。

●在日コリアン障害者・姜博久さんのお話

さて、チェック終了後、障大連の方々を交えて交流会を行いました。まず、JR班、地下鉄班それぞれから報告をおこなってもらいました。「長居は予想以上にひどかった」という意見が大勢を占めました。そしてその後、全国障害者解放運動連絡会関西ブロックの姜博久さんのお話を1時間ほど聞かせていただきました。姜さんは、在日二世であり障害を持った自分の生い立ちを話してくださいました。そして、法のはざまに置かれ無年金状態になってしまった事などをわかりやすく説明してくださいました。在日コリアン障害者の問題は、在日運動と障害者運動の間で、多くの人たちに理解されていない問題ですが、姜さんのわかりやすく丁寧なお話に、多くの参加者が熱心に聞いていました。

その後、DPIの方々を交えて夜遅くまで交流会が行われましたが、障害者の視線で社会を見て、障害者と共に行動することで、参加者みなさんは「当事者の視点」の重要性を認識したのではないかと思います。日本国内のワールドカップ開催地はまだ残り9ヶ所ありますが、長居での経験を生かして、韓国の仲間や地元の障害者の方々と共にチェックできればと思います。

Copyright(C) 2001, Youth-Forum Japan Committee, All rights reserved.