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カシマサッカースタジアム チェック報告

文責:バリアフリーチェックPT
(ユースフォーラム・DPI日本会議)
調査済み・予定の競技場の一覧はこちら

○今回の中身 カシマサッカースタジアム(茨城)

  • 日時:2001年10月19日(金) 9:30〜16:40
  • 場所:
    • JR東京駅―(総武線快速)―JR鹿島神宮駅
    • 鹿島神宮駅―(徒歩(4km!))―カシマスタジアム・スタジアム前駅
    本来は最寄り駅のカシマスタジアム前駅からチェックするはずだが、この駅は試合開催日のみ使用の臨時駅。そのため、最寄の鹿島神宮駅からのチェックとなった。
  • 参加者:9名(フォーラム3名、DPI2名、その他4名/うち、障害者2名参加)
  • 会場側からの参加者:1名(県職員)
  • マスコミ:茨城新聞、読売(茨城版)、ラジオ茨城(電話取材)

○その1 JR、相も変わらずバリアフル

横浜のプレテスト、大阪長居の第1回チェックを経て、今回はアントラーズの本拠地カシマスタジアムへ。新たな参加者を加え、小粒ながらピリリとしたメンバーで鹿島へと向かう。しかし遠い。アクセスを考え東京駅から出発するも、目的地までは2時間強。晴天の下、路傍にはセイタカアワダチソウが咲き乱れる。これもアメリカの産物。戦後の日本社会を象徴するものだなあと思いつつ、電車に揺られる。

東上一路、電車は成田から単線の鹿島線へ。「単線―ローカル―バリアあり」という嫌な予感がする。その予感は、到着前にすでに現実のものとしてあらわれた。

低床化が進んだとは言え、結局これだけの段差が(25センチ)電車とホームの間にある。旧型の電車と同じくらいの段差がある。こども、お年より、酔っぱらい、受験生、もちろん車いす利用者にも厳しい。その上この路線には無人駅もチラホラ。「車いすの人は、ひとりでは来れない」という声が聞かれた。そんなこんなで、ようやくバリチェのスタート地点、鹿島神宮駅へ。そこでまたもや問題が起こったのだった。


鹿島線は高架駅が多い。終点となる鹿島神宮駅もそうなのだが、大体の駅が階段のみになっている。エレベータ、エスカレータはもとより、首都圏の駅にはよくあるエスカルなどもなく、車いす利用者や階段を利用するには大変な人への対応が皆目見られなかった。

早急に駅員を呼んだものの、駅員は車いす利用者への対応をあまりしたことがないようで、「そのまま階段を下りられないか」「車いすを降りられないのか」「電動ではなく、普通の車いすに乗り換えて欲しい」などの発言を連発。

障害者の「身体」を奪うようなことを平然と言ってしまうのは、どうしていいか分からずあせっている、というだけでは決してない。どんなひとでも、当たり前のようにその場所/施設/設備を利用できるのが当然だし、そうすべきだという考え方に立っていないということに他ならない。大阪・JR長居駅職員の対応にも同じ傾向が見られたが、どういうことなのだろうか?

またこの駅には、キャタピラで階段を下りることのできる設備があったのだが、これは最後まで使われなかった。駅にいた売店の方やお客さんに話を聞いたところ、この駅を障害者(とくに車いす利用者)が利用することはほとんどないらしい。「バリアフリー」だからとりあえず設備は用意したのだろうが、ハードだけではなくソフト面でも「バリアフリー」を進めないとこのようなことになるのだろうと思う。

今回だけの話ではないが、このような設備を利用しようとすると、大体駅側から「事前の連絡」というものを求められたり、乗り場を指定されたりする。磐石の態勢をとる、と言えば聞こえがいいかもしれないが、これは変。どんな人がどんな時に電車にのってどこで降りようとその人次第である。その際に問題がないのが当たり前で…という先程の話に戻っていくわけだが、それにしても駅員の対応は横柄だった。結局、ホームを共用する鹿島臨海鉄道の運転士さんも発車時刻を気にせず手伝ってくれ、とりあえず改札までは降りられた。階段には踊り場があったものの、だからと言ってここが評価できるわけではない。


結局、「普段使用していない」ことがアリアリとうかがえる物品搬送用の出入り口(しかもその先にはアイスの冷凍庫があった)を「つくって」改札をでることになった。W杯ではこの駅も最寄駅として利用されることになると思うが、こんな状況では先々大変なことになりそうだ。そもそも、鹿島神宮に行く人もこれでは大変なのではないだろうか?


今後どのような対応を取るのかと言う質問に駅員は「これからきちんとします」と言ったものの、鹿島でこうだとすれば、これからチェックする地域の駅もこんな感じかもしれない。

そのほか気付いた点では、駅構内に車いす利用者も使えるトイレがない(駅前にあるが、狭い!)ことも挙げられるが、何よりビックリするのはこれだけの施設でありながら、この駅の出入り口にはスロープがあることである。入り口だけこんなのつくっても、中がああではどうにもこうにも…。



○その2 さて、競技場は?

電動車いすの残りバッテリーが皆の話題になるなか、4km近く歩いてようやくカシマスタジアムに到着。これだけ歩かされるということは、ここはサッカー以外にはほとんど使われない場所だということがよく分かる(隣にスポーツセンターがあるが、どうも人がいなさそう)。

試合開催日でないということで、通常使用されるゲートとは別の場所から入る。建物内は、今年5月に改築されたこともあってか、ドアの出っ張りをのぞいては目立った障壁はないように思った。ただし、この入り口(関係者向けか?)、点字ブロックがあったが受付前で途切れていた。この後は案内に頼め、ということなのだろうか?


建物内を通って、車いす利用者向けのゲート(専用ゲート)へ。ここでは「車いすの観客と他の観客とが別のゲートで入場する」点で、マイナス。ただし、ゲート付近はほぼフルフラットである。

車いす席は140(最前列100、最後方40)席。最前列、そして3階にある。最前列の座席はサイトラインも確保され、ある程度のスペースもありこれはいい。ただし、車いす席は基本的に「当事者、介助者」の専用として考えられており、車いす席と一般席の間は完全に分断され、相互の移動が出来ない構造になっている。通行の便を考えたとのことだが、家族・グループ観戦の場合はどうなるのか? との声が参加者から指摘があがった。

 「誰にとってもアクセス可能である」ことがバリアフリー施策には不可欠であって、「誰某専用」、「隔離」にもなり兼ねないような場所や設備をつくることがバリアフリーなのでは決してない。確かにこの車いす席自体は他の競技場に比べサイトラインを確保するなど配慮が見られるが、根本の発想にバリアがあるのでは、と感じられた。

3階部分の車いす席は、同じゲートにあるエレベータで移動する。ゲートが専用であるため実質的に車いす利用者の専用エレベータとなっている。とくに急勾配になる座席を利用する人でエレベータを利用したい人もいるはずで、この点ではもう少し配慮が必要かもしれない。

また、こちらの車いす席は、一般席の観客が立つとピッチが見えない。大体Jリーグであれ高校サッカーであれ、観客は大体興奮するのであって、そこで試合が見えないとなると、盛り上がりからの疎外が生じてしまう。何のためにスタジアムに来たのか? ということになってしまう(これは長居でも指摘されたことだ)。サンフランシスコ市が策定する「サイトライン(視線)」の規定では、車いす席の観客の視線が、他の観客が立った場合の視線よりも上にあるように席の位置を設定すること、となっている。この点からすると、3階車いす席は「試合が見えるかどうか」という基本的な点でマイナス。


続いて、トイレ。広さは適度にあるように見えるが、問題はドア。これまでのチェックにはないタイプのドアで、巨大な、普通の、ドアである。車いす利用者が使用しづらく、基本的なところでマイナス。また、男女別ではなかった。この「鹿島型(?)」のドアは、増設と同時につくられたものらしい。引き戸、自動ドアにしなかったのは、「数をそろえる」ことに主眼がおかれた結果だろう。試合の際は、ボランティアスタッフが常駐し様々なケアを行うとのことだが、「バリアフリーな施設」は、まず障害当事者が自分で使えるものであるべき。足踏み式の排水(ノブ、ボタン?)がなかったのもこの点でマイナス。


聴覚障害者、視覚障害者向けの設備という点については、対応した職員もよく分からないらしく、「後で報告する」とのこと。見たところスタンド内に点字表示、ブロックはあったような気もしたが、うろ覚え。あまりなかったのかも知れない。多言語表示については、「試合が決定し次第対応」とのことだった。とりあえず、今のところは目立って対応しているとまでは言えない。

なお、スタジアム正門からゲート周辺には点字ブロックが設置されるが、一般席ゲートの方にブロックが延びていなかった。視覚障害者も別ゲートからの入場になるのだろうか? この点は、職員から後日レスしてもらうことに。


今回は担当職員にも車いすに乗ってもらってチェックした。初めての経験で、イロイロ参考になったと思う。



○その3 ホントの最寄り駅チェック、そして帰る

一通りスタジアムのチェックを終え、「本来の」最寄り駅であるスタジアム前駅のチェックを行う。この駅はもともと貨物駅だったのを、スタジアムの設置に伴い最低限の改修をおこなって人も降りる駅にしたという。駅前には多少勾配のきついスロープと階段があるが、このスロープはもともとは自動車用の道路(軽トラくらいしか通れない幅だが)だった。

構内には入れず、外目にチェックすることになったが、駅から改札までは階段のみ。勾配がきつく、かつ踊り場は狭い。電動車いすの場合は、鹿島神宮と同じような問題が生じるだろう。改札も狭く、これも同じ。階段については、参加者からは「このままでもエスカルが設置できる」という指摘があった。W杯実施までに駅ホームの拡幅を行うらしいが、この際はホーム―改札・出口のフラット化をすべき。

約3時間ほどのチェックを終え、担当職員の方のご好意で車で鹿島神宮駅まで送ってもらい、とりあえずカシマスタジアムのバリチェは終了。


高速バス(観光バスタイプ)で「ノンステップ」「リフトつき」というのはほとんどお目にかからない(駅に到着した時に出発した時のバスは、車いすマークがついていたが…)。座席には車いすで乗り込めないのは致し方ないが、問題は電動車いすが収納できるかどうか、という点。幸い収まり、これで無事東京へと戻ったのだった。



○まとめ

鹿島チェックをまとめると、一にも二にもアクセスの問題がまずあげられる。最寄り駅のバリアが非常に多い。競技場までの経路に大きな問題はないが、試合開催時に利用できる字義通りの「最寄り駅」にバリアが多いとあっては、それもスポイルされてしまう。スタジアム自体は改築されたこともあってある程度バリアフリーは達成されているといえる。しかし、当事者との意見交換を事前に行ったということはないようで、利用者との間の「溝」がやはりある。特にあげるなら、車いす観客の経路・観客席が一般観客と分離される点と、トイレの部分である。

駅からのアクセスについては会場側だけでなく、開催自治体・交通機関・そして当事者の間の意見交換が必要不可欠だろう。単にワールドカップ開催だからというのではなく、この点は実施して欲しいと思う。


○チェック評価

チェック箇所 ポイント
(/満点)
マイナスポイント
50/200 ホーム〜改札 ・階段しかない:-30
・改札の幅(どこも通れない):-30
トイレ 車いすトイレがない:-50
(視覚障害者−要チェック)
聴覚障害者の情報保障 公衆FAXなし:-10
外国人向けの情報保障 日本語のみ:-30
計:150点マイナス
駅〜競技場 100/100  なし
競技場 115/200 入口 ・一般客と入場口が異なる:-10(避難経路:要調査)
・客席の分離がある(観客席の):-15
車いす用観客席 ・アウェイ側座席がない:-15
・視線:-10(1回最前列席の分はプラスだが、 最後方の席はマイナス)
トイレ ・車いす席に対して数が少ない(5〜10人 に一穴) :-5
・扉が重くて開けにくい:-10
・水洗ボタンが一つしかない:-5
エレベータ 車いす専用になっている:-15
計:85点マイナス
総計:265/500
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