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仁川(インチョン)文鶴競技場
チェック報告

文責:きしまさゆき・バリアフリーチェックPT(ユースフォーラム・DPI日本会議)
調査済み・予定の競技場の一覧はこちら

○今回のチェックは…
仁川文鶴競技場(韓国・仁川/日韓共催チェック)

  • 日時:2002年2月24日(日)13:00〜17:00
  • 場所:プピョン(富平)(仁川地下鉄1号線 プピョン駅)〜文鶴競技場駅−仁川文鶴競技場
  • 11名(日本側:フォーラム2名、DPI1名/韓国側:障碍人便宜施設促進市民連帯、KYC(韓国青年連合)、ボランティア参加者 計8名/障害者3名参加)
    ※なお、日本側参加者は他に2名(DPI)、障害者は2名参加した。
  • 会場側からの参加:4名(会場職員3名、ボランティアスタッフ1名)
  • マスコミ:なし
    なお、この事業は「平和と人権に基づく日韓市民交流を促進する日韓NGO共同プロジェクト」の一環として、財団法人 庭野平和財団から助成を受けています。

○その1 バリチェ隊、飛ぶ

神戸チェックから1週間、怒涛のチェック後半戦第二弾は韓国・仁川(インチョン)。3度目の日韓共催チェックは、韓国側チェックのトリを飾る場所ということで、初の韓国チェックに向かう日本側参加者も成田から俄然気合が入る。まずは、前日の成田空港チェックの模様から。

2月にしては非常に暖かかったこの日の関東地方、午前中の成田空港は14.5℃と、上着をとってもいい位の陽気。残念ながら、ここではそんなに外に出る機会もないのだけれども。成田空港までのアクセスは、自動車のほかには京成線・JR線とあるが、今回はややお値段の張るJR線を利用してみることに。

文責は総武線沿線に住んでいるので、行きの電車は「快速エアポート成田」を利用する。車両は鹿島チェックで利用した総武線快速のもので、基本的な構造は変わらない。前のチェックでは見過ごしていたが、写真のように車いす利用者席のスペースがあることが分かる。目の前がトイレというのは困りもの。


荷物の多い利用客に配慮してか、成田空港駅はそこそこ施設が充実している。ホーム〜改札へのエレベーターも36人乗りと大型(京成線も同型らしい)。ただ、入口の前には写真のようにカート止めがついている。車いす利用者は脇のチェーンを外して入る形だが、ちょっと狭いかもしれない。また、このエレベーターを含め、駅構内は点字表示、点字ブロックとも設置されていなかった。空港構内には設置されているのに、どうしてだろう?

改札のあるフロアには、車いす利用者向けトイレが男女別に設置されている。一般トイレも含め、通路はフラット。トイレはある程度の広さを確保してある。鏡、洗面台がやや小さめな他は、特に強調する点はない。一般トイレ(男子用)は、小便器のひとつに手すりが設置されている。


改札を出てパスポートのチェックを受けると、本格的に空港の施設内に入る(そう言えば前の日の深夜まで、パスポートが必要なことを忘れていた。みなさんも気をつけてくださいね)。

駅から空港施設までの通路は、階段・エレベーターのほか、車いす利用者とカート利用者用のスロープがある。スロープは改札から左奥側にあって、初めて利用する人は場所がわかりづらいかもしれない。カートが集積していて、ちょっと通りづらいところと言えば分かりやすいだろうか。このスロープからは、点字ブロックが敷設されている。視覚障害者が鉄道で空港まで来る場合、ここまでどうやって来ればよいのか対応に疑問の余地が残る。

施設内に入ると、階段・エレベーター(大体30〜36人乗り)・エスカレーターと、移動手段はほぼ完備されている。自販機もすべてユニバーサルデザインのものが設置されていて高評価。ちなみに出発ロビー(4F)の自販機も全てユニバーサルデザインになっている。

道中の案内表示は、日中韓英の4言語表記が基本のようだ


エレベーターやエスカレーターを乗り継ぎながら、4Fの出発ロビーへ。週末だけあって、どの航空会社も混んでいるが、とりわけ韓国行きの便が賑わいを見せているように感じた。「日韓交流」は、とりあえず「交通」の面ではなお続いている。相互の行き来のバランスはともかくも。

出発までまだ多少時間があるので、ロビーを回ってみる。ロビーも、駅と同様ユニバーサルトイレが男女トイレそれぞれに設置されている。こちらのユニバーサルトイレは駅のものより狭いが、ベビーベッドが設置されている。公衆電話は両サイドに配置されているが、車いす利用者対応の高さのものが設置されているのは片方だけ。

ロビーを一周したところで参加者がみな合流。早速、仁川国際空港へ向け、大韓航空のロビーへ。空港でのバリアフリーチェックの大きなポイントになるのは、車いす利用者がシップサイトまで行けるかどうか(航空機の構造上の問題で、普通の車いすは機内に入らないため、機内から座席までの移動はアイルチェアと呼ばれる車いすを用いることになっている。このとき、機内に入る直前まで普段から使っている車いすで行けるかどうかが、車いす利用者のアクセスをめぐる大きな問題のひとつになっている。札幌チェック報告も参照のこと)。ソウルチェックの際、日本側参加者がユナイテッド便を利用した時はいくつかトラブルがあったという報告も受けているので、一行は緊張しながら窓口に臨んだ。

大韓航空側は当初「窓口からアイルチェアを使ってもらう決まりになっている」と伝えてきたが、その後話が二転三転。悪いことは重なるもので、そのときちょうど大韓航空のシステムにトラブルが発生し、窓口は大いに混乱。しばし待たされた後、結局空港職員の手も借りながら、シップサイトまで普段利用する車いすで移動した。ことばの問題もあってなかなかスムーズにはいかないものだが、誰でも同じように利用できることが公共交通機関の大前提であることを、どの会社であっても是非基本に据えて、滞りないアクセスを実現して欲しい。


定刻から30分ほど遅れて、KE702便は仁川に向けて無事離陸。韓国は気温こそ4℃と寒そうだが、雪は積もっていないという情報に札幌チェック参加者の文責・そして車いす利用者のMさんは一安心。1時間40分ほどで仁川国際空港に無事着陸した。

仁川空港へのアクセスはまだ整備されておらず、バスしかない。そのバスもバリアだらけで乗れないため、一行は韓国の「障碍人移動奉仕隊」という団体に協力してもらい、リフト車をつかってソウルまで移動する。

○その2 韓国鉄道事情1(地下鉄編)

帰宅ラッシュに巻き込まれながらも車は快調に飛ばし、1時間半ほどでソウル市内に到達。ゆっくり焼肉を食べる間もなく(魚料理は堪能したが)、韓国側パートナーとの打ち合わせ、打ち合わせ、打ち合わせ…。宿に着いたのはほぼ夜中。早々に寝て、翌日に備える。


さて、翌日。国鉄(地下鉄1号線)と、私たちが利用する仁川地下鉄1号線が交差するプピョン駅からチェックを開始。地下鉄1号線はソウル・東大門など繁華街を通る路線。プピョン駅は乗換駅として、仁川競技場までのアクセスでよく利用されそうなところ。国鉄駅のチェックは帰途に行うことにし、まずは地下鉄からチェックする。

国鉄と仁川地下鉄は連結しておらず、駅舎外の階段かロータリーの中洲にあるエレベーターで移動する。今回はエレベーターを利用したが、それにしても横断歩道が長い(=車道が広い)。そのうえ青信号の時間も短い。「車優先」のまちはかくも歩きづらいものなのか、と改めて思わされる。

なんとか歩道を渡って、エレベーターへ。道の途中から点字ブロックが敷設されているが、これではあまり意味がない。そもそも音声誘導のない、あの横断歩道を渡るだけでも至難の業。使いやすい設備が使えない場所にある、というのは韓国でもままあるようだ。

エレベーターは13人乗り、だが日本のものよりやや狭い印象。特徴的なのは、エレベーターが「障碍人(日本で言うところの「障害者」)専用、一般の利用者は乗らないで下さい」と明記されている点。韓国側参加者の説明では、

(1)法律で、「障害者専用」と明記することが義務付けられている、
(2)あまり丈夫ではないため、多くの利用者が利用すると壊れる、
(3)高校生などがエレベーターを「占領」して、障害者が利用できないと言う問題が何度か起こっている…

という背景があるそうだ。日本では「誰でも利用可能」なことがこうした設備には求められているが、韓国は幾分異なった基準でバリアフリーがすすめられている。それよりまず、「よく壊れ」ないエレベーターをつくるのが先、だろうか?

エレベーターはホームまで直通(障害者は料金が無料なので、改札を通らなくてもいい、ということなのだろうか?)だが、一旦改札に出る。券売機は日本でもおなじみの形。関西でよく見られる形のもの、と言えばわかりやすいだろうか。一応ひざが入る部分を深くしてあるが、車いす利用者には使いづらい。料金の投入口までしか手が届かなかった。視覚障害者・聴覚障害者への情報保障と言う点では、点字ブロック以外に取り立てて設備はない。点字料金表なども見られなかった。照明がかなり暗い(多分省エネ)ため、一般の表示や案内も見えにくいかもしれない。

仁川地下鉄の改札は、前線で自動改札。ただし、車いす利用者に対応したものはないので、車いす利用者は有人改札を利用することになる。

ホームは特に変わったところはない。新設の路線だが、ホームドアは設置されていない。全車両とも6号車に車いす席を設置しているそうで、6号車が停車する部分には車いす席の案内表示があるほか、エレベーターのドアからこの部分まで、点字ブロックが伸びている。

4、5分待って電車が到着。特に駅員が出てくるわけではないが、かと言って電車とホームの間に段差がないわけではない。

約20分ほどで、電車は目的地・文鶴競技場駅に。早速下車して改札に、と思ったらエレベーターが動かない。どうしたものか…と思っているとどこからか「天の声」。スピーカーから「どうしましたか?」と駅職員が尋ねてくる。何でも、普段それほど利用者がいないこと、また開放しておくと子どもが遊ぶので利用者がいないときは電源を落としているのだそうで、車いす利用者が来たらモニターで確認して、電源を入れるという。随分面倒な手続きだが、W杯開催時はずっと電源を入れておくのだろうか?

途中動きの怪しくなるエレベーターに不安を強くしつつ、改札を抜ける。ここではトイレと公衆電話をチェック。

車いす利用者が利用可能なトイレは、男女共用でひとつ。開き戸(普通のドア)式で、鍵は手動(レバー式)。神戸スタジアムのトイレに似ているが、こちらのほうが狭い。水洗ボタンは脇の部分と、足元に設置されていてグッドだが、呼び出しボタンの位置が高く×。手すりが車いす利用者の移動を妨げているほか、洗面台が一般トイレの基準のもので使いづらそう。鏡も斜めに配置されている。何より紙がないのは困る。紙の自販機もない。

公衆電話は2台設置されていて、1台が車いす利用者対応の高さに配置されている、ことになっているがこれが高い位置にある。受話器まで手が届かないというのでは、ちょっと問題。何らかの設置基準があるのだろうが、これは是非見直して欲しい。

○その3 さて、韓国の競技場は…

改札からエレベーターで上ると、そこはもう競技場の敷地内。いくつかスタジアムらしきものが見えるが、一番奥に文鶴競技場がある。多少傾斜のある歩行者専用通路を歩くこと5、6分。ついにスタジアムに到着!

…のはずが、ここで思わぬ展開に。スタジアムへの入口手前には、空港でよくお目にかかるゲート。そしてその周りには、こわもてのオジサンたち。服には「POLICE」の文字。 …警察?

何か大変な事態に巻き込まれたのか、バリチェ隊が怪しい奴らだと思われたのか、とにかく一瞬緊張させられたが、要するに試合の前からセキュリティーチェックを欠かさない、ということらしい。そういえば韓国にはアメリカも来るし。これまでのチェックで、「アメリカには来て欲しくない」と話す職員の方が何人かいらしたが、こういう手間がかかることを予見していたのだろう。それにしても日曜の昼間からこんなに緊張させなくてもいいのに。

参加者全員がチェックを受け、ようやく競技場に入る。出るときは何もされなかったが、セキュリティーってそんなものなのだろうか? ともかく、まずはスタジアム内に併設されている「ワールドカップ広報館」で施設の概観について説明を受ける。

広報館は単なるグッズ売り場、ではなく、常設でスタジアムの紹介やワールドカップにまつわるエトセトラを紹介する施設になっている。入口は韓・中・日英・仏・西と6言語で「ようこそ ワールドカップ広報館へ」と書かれていて、館内には常時、韓・中・日・英の4言語に対応するボランティアスタッフが詰めている。今回のチェックでも日本語対応のスタッフがチェックで一緒に参加してくれたが、この方は韓国語対応のボランティアとして横浜にも来るという。日本に比べて、W杯にかける「力」、本気で「客を呼ぼう」という意気込みを強く感じる。

一旦広報館を出て、メインスタンドのゲートから車いす観客席へ。観客席までのアクセスはこのゲートか階段を使うことになるようだが、特に車いす観客と一般観客の銅線が分断されることはなさそう。ゲートから車いす観客席までの直線距離はかなり短い。

さて、メインスタンド。車いす観客席は、今までにもよく見られた、観客席の後ろが通路になっているタイプ。ソウルと同様、車いす観客席の隣には、介助人が座れるように補助席が用意されている。これは、韓国の競技場ではポピュラーな設備のようだ。日本でも導入して欲しい。

メインスタンド・バックスタンドに250席(総観客席数52,179)ある車いす観客席のサイトラインはというと…残念ながら見えず。スタンドの傾斜がかなりゆるいことがアダになってしまったようだ。

担当の方が「それは何ですか?」とこちらに聞いてくる始末だったので、磁気ループ席はない。磁気ループ(席)は、完備している競技場と、その存在すら知らない競技場とで、大きく差が現れていることが分かってきた。

大型スクリーンはサイドスタンドの両端に設置されている。配置の仕方では、やはり神戸が一番うまくやっているようだ。


続いて、トイレをチェック。車いす利用者が利用可能なトイレは20箇所で、観客席の数に対しては少ない方。引き戸のドアを開けると、右奥にトイレ、手前に洗面台がある。ある程度の広さは確保されているが、設備はお粗末。洗面台は一般トイレのものと同じで、使いづらい。水洗ボタンも背面にひとつだけ、呼び出しボタンもない。

Mさんがちょうどいいタイミングで催してきたので、実際にこのトイレを利用してみて使い勝手を確かめてみることに。と思ったら困ったことに
   「紙がない」
日本を出る前に道端でもらったティッシュがあったので、それだけならよかった。しかし、悪いことは重なるもので
   「あれ、このトイレ鍵がない」
いや〜しまらないハナシでして、と言ってる余裕は既にない。ここで他の参加者がドアを全開した日には、国際問題に発展しかねない。バリチェももう出来ない…


結局、文責はMさんの介助をし、日本から一緒に行ったOさんにはドアの前に立ってもらい、何とかして「重大局面」を打開した。他の設備はお粗末で鍵だけ「バリアフリー」というのはあんまりな話。ソウルスタジアムでも、車いす利用者向けトイレのドアがアコーディオンカーテンになっていたという話を聞いていたが、トイレという最もプライベートな空間に最低限の配慮もないのは大いに問題。実際の試合までに、確実に鍵を取り付けて頂きたい。

トイレひとつにかなりの神経を使った後で、一般トイレをみる。一般トイレの出入口はすべて普通のドアで、これがまた非常に重い。中はそこそこの広さをとってあるが、案内もほとんどなく、使いづらい。男子トイレは、他の競技場と同じく大きい方の入口が狭く、車いす利用者が使えない形になっている。


大体のチェックを終え、広報館の会議室で質疑応答。その他の設備等のポイントとあわせ、簡単にまとめる。


<エレベーター>

2基設置。3階席(ボックス席、一般にも販売)を利用する車いす観客「専用」扱いで、一般のゲートからは見えない位置にある(ドアをあけ、非常階段のあるフロアに移動しないとエレベーターに乗れない)。ボックス席のある3階には、車いす利用者向けトイレが設置されていない。

<情報保障>

基本的に、案内表示は韓・英・中(漢字)の3言語表示。管理設備の案内は、韓・英の2言語表示だった。ただし、スタジアム内の案内は非常に少ない。点字ブロック・点字板ともにところどころにバラバラにあり、情報保障の体をなしていないものが多い。

パンフレットは、韓・英の2言語表示だった。

<駐車場>

質疑応答が終わったあとで、車いす利用者の駐車場をチェック。スタジアムまでの距離は、それほど遠くはなく30台くらいは駐車ができるようになっている。一応、車いす利用者の車はスタジアムのメインゲートまで乗り入れることが出来るのだが、そのことを案内する表示や掲示はない。


初めて韓国のスタジアムを見たわけだが、感想としては「いびつなバリアフリーのスタジアム」といったところか。基本的な部分(通路のフラット化など)は満たしているが、細部は意外にいい加減になっている部分が多い。とにかく、トイレの鍵は早急につけて欲しい。また、他のスタジアムと同様、情報保障はより進めて欲しい。あって困るものでは決してないのだし。ボタンティアスタッフの常駐など、スタッフの意気込みが伝わってくる分、設備面でマイナスが多いのは残念。

○その4 韓国鉄道事情2(国鉄編)

チェック後、懇談会の会場(障碍人便宜施設促進市民連帯の事務所)に向かうため、国鉄を利用することに。文鶴競技場駅からプピョン駅まで戻って、そこから国鉄(地下鉄1号線)に乗り換える。

国鉄プピョン駅は、改札が2階にあり、ホームが1階にあるというメンドくさい構造なので、駅が入っているデパートのエレベーターを使って上がり、そこからまた下らないといけない。そのデパートのエレベーターがすさまじい混み具合。日曜だから、というのもあるが、それ以前にかなり周りの人が「気を使わない」。車いす利用者がいようといまいと、とにかくすごいスピードでエレベーターに乗り込んでいく。日本と韓国では随分反応が違うものだな、と妙に感心…している場合ではない。乗れないとこちらも困るので、大分大声をあげながらやっとこさ乗り込む。いつもこれでは、障害者が街に出て行くのは相当大変そう。いま韓国でアクセスフリーを求める運動が(1970〜80年代の日本よりも、もっと)激しく行われている背景が、何となく分かる。

エレベーターから何とか降りて、改札へ。途中に階段があり、急なスロープ(手動車いすの人は一人では利用できなさそう)とリフトが用意されている。リフトはどうやっても動かないので、スロープを利用する。

健常者が歩けば2分もかからない道中が、車いす利用者には7、8分以上かかる。この「時間の差」「距離の差」「高低差」…様々な差異を埋めることが、バリアフリー/ユニバーサルデザインといわれるものの、ひとつの意味だ。

券売機はご覧の通り、箱型。地下鉄のものより断然使いづらい。また、料金表示はついているが、点字の料金表、案内は設置されていない。点字ブロックも敷設されておらず、視覚障害者・聴覚障害者の情報保障には不足の点が多い。

改札は、バーを押して入るという、欧米の映画でよく見るタイプ。車いす利用者の改札は、プピョン駅では「障害者専用」の自動改札が設置されている。ただ、どの駅でも自動改札が導入されているわけではなく、場所によっては有人改札のところもある(障碍人便宜施設促進市民連帯の事務所がある鐘路3街(チョンノ3ガ)駅は、有人改札だった)。

改札を抜けいざホームへ、というところで一行の目の前には階段。車いす利用者向けの設備は、エスカルではなくギャラベンダーという設備を利用することになる。これは「エスカルの廉価版」と考えてもらえばよく、廉価版だけあって安全性・スピードともにいいとこなし。鉄板と鉄パイプを組んだだけのものなので、近年落下事故が絶えないという。韓国の鉄道では、アクセスフリーの手段として大体の駅にギャラベンダーが設置されているようだが、やはり「会社優先」の措置と言わざるを得ない。Mさんが利用してみての感想は、「傾いているし、遅いし不安」とのこと。さらに、移動中は常にボタンかレバーを押してないといけないので、手が動かない人は一人で利用できないという難点もある。唯一評価できるところは、利用者が自由に使えるようにしてある(鍵を設置してあるか、駅が利用者に鍵を渡すか、どちらかの対応をしているそうだ)ことくらい。


約1時間ほどで目的地の鐘路3街駅に到着、またもギャラベンダーの世話になって地上に出る。障碍人便宜施設市民連帯の事務所で懇談会を行って、波乱の仁川チェックはこれにておしまい。一行が心待ちにしていた焼肉は、また次の機会となった。

○その5 まとめ

日本と韓国の差異がどれだけあるか、という点が今回のチェックの大きな見どころだったが、「バリアフリーの途中」の点が多い、というのが全体的な感想。特にアクセスの面では日本以上に障壁の多いところもあり、それだけに韓国の障害者団体も、この点に力を入れているようだ。

スタジアムは良かれ悪しかれ、日本と同じ点が多い。当事者の視点のないまま「こんなものだろう」とバリアフリー施策を行ったことが、裏目に出ている点が多く見られた。

W杯にあたって、設備面で早急に対応できない部分は人的対応で何とかするしかない。その点では、当事者の運動が活発であり、またボランティアスタッフが日本より充実していることが、ある程度期待をもたせる。なにせ2、3ヶ月でほとんどのチェックを終えた韓国なだけに、日本でもうかうかしているとあっという間に越されるかも。お互い交流しつつ、双方の市民社会の発展に寄与できるような「最終報告」ができたら…と思った、仁川チェックだった。

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