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在日側発題文

東アジアの和解と協力に果たすべき日韓市民社会の役割〜ユースフォーラムの発展に向けて〜

宋勝哉(在日韓国青年連合事務局)

■はじめに

新しい千年が幕を開けた。二度の世界大戦、その後の東西冷戦体制に代表されるような「戦争と対立」の20世紀を「平和と和解」の21世紀に変えていくために、われわれ<日本−在日−韓国>の青年が担うべき役割は何なのか?それを考えていきたい。

■東アジアの和解と協力を目指して〜日韓市民社会の役割

東アジアにおける政府間対話は、東西冷戦終結後も総じて停滞していたと言わざるをえない。朝鮮半島における地域冷戦は未だ厳しく残存している。しかしながら、2000年に入り南北首脳会談の開催、日朝国交正常化交渉の再開など東アジアにおける政府間対話が進展する気配を見せている。この間、外交的に孤立していた北朝鮮も「全方位外交」を展開し、イタリアとの国交正常化を始め西欧諸国やフィリピンなどとの関係改善やARF(アセアン地域フォーラム)への参加などを進めている。

このような政府間対話の進展は歓迎されるべき動きである。しかしながら一方で、東アジアの地域冷戦を終わらせるためにも、単に政府間レベルでの緊張緩和外交だけではなく、国境を越える市民社会の交流、協力、連帯によるアジア地域の民主化を基盤として、この地域の未来を構築していくことが重要である。

東アジアにおける冷戦終結の目標である朝鮮半島の統一を考えるならば、このことはもっと明らかになる。というのは、朝鮮半島の統一は政府間の交渉だけで、実現されるものではなく、それぞれの市民が統一を希求し、統一を可能にするような価値観を共有することの上に成り立つものである。南北経済交流も徐々に活発化してきているが、朝鮮半島の統一が主に市場の論理の浸透・共有に基づいてのみ進められるのではなく、それを超えていくためには、人権と民主主義を志向する市民の集合体としての市民社会が分断線を越えて形成されていく必要がある。それぞれの条件の下で形成される市民社会が、忍耐強い交流によって、共通の価値観を積み重ねていく必要があるのである。

<日本・在日・韓国>それぞれの青年が、日韓の間に、そして東アジアの間に横たわる問題を見つめ、議論することで、共通の価値観を形成していく手がかりが選られるはずである。そうすることによって、国民国家が残した課題を市民社会が包み込みながら乗り越えていく道があることをわれわれは示さなければならないだろう。

■われわれのできること〜ユースフォーラムの発展に向けて

以上の問題意識を現実化させることのできる、有効なツールとしてわれわれはユースフォーラムを位置づけている。ユースフォーラムも第4回目を数え、今後の発展を期すためにも発展の方向性・ビジョンの策定が求められている。

1. ユースフォーラムのコンセプト

ユースフォーラムの発展ビジョンを考える上でまず前提になるのは、ユースフォーラムの基本コンセプトの決定である。結論的にいえば、日韓青年の「出会いと交流」を中心にしながら、日韓NGOの活動家による「課題共有と協力連帯」を目指していくということになるかと思われる。

2. 第5回ユースフォーラムに向けた3つの提案

そのようなコンセプトを基本にしながら、まず、第5回ユースフォーラムの日本開催を提案する。日韓の国境を超えた市民社会を構築すべく、われわれが出会い、交流し、議論し、行動する空間は今後も変わることなく重要な意味を持つ。その上で、第5回ユースフォーラムの開催に向け、3つの提案を行う。


1)北朝鮮青年との交流空間の創出に向けて〜日本で38度線を乗り越えよう!

ユースフォーラムの基本コンセプトである「出会いと交流」という面に促して、われわれは北朝鮮の青年たちとの交流空間を作り出していきたい。

南北首脳会談の開催や日朝国交正常化交渉の再開など政府間対話が活発化し、関係改善が現実化する情勢にわれわれは直面している。しかしながら、先にも述べたように、政府間レベルでの対話を市民社会間の対話が支えることなくしては、真の東アジアの和解を成し遂げることはできない。そのような問題意識から、北朝鮮政府や団体との交流を積み重ねている日本や韓国のNGOが少なからず存在する。

われわれは、今こそ「積極的中立」の理念を現実化するべき時に来ていると考える。様々なNGOの北朝鮮との交流実績をユースフォーラムという、日本・在日・韓国という三者が一同に出会う場で結び付け、北朝鮮の青年たちとの交流を拡大していきたい。

そのためにまず、第5回フォーラムでは、日本で38度線を超えていくことを目指したい。具体的には、来年第5回フォーラム時の民団、総連公式訪問の実現や、民団系青年団体、総連系青年団体との交流の場を作りたい。


2)参加NGO・個人の画期的拡大

われわれは、ユースフォーラムが、道路や通信網、公園、図書館、講堂のように個別の活動を側面支援し、「日韓」の意味を広く伝えるための「公共財」の役割を果たす必要があると考えてきた。第4回までのフォーラムを振り返ると参加者・団体が徐々に拡大する過程であった。ユースフォーラムは、今後も、より数多くの青年に開かれた場を提供し続け、「公共財」としての機能を高めていかなければならないだろう。

そのための今後の課題としては以下の2点であると考える。

まず第一に、ユースフォーラムの社会的な認知度を拡大させながら、より多くのNGO・個人の参加を促していくということである。日本で開催される第5回フォーラム時には、日本での参加NGO・個人の拡大が問われることになる。

第二に、青年が、気軽に日韓や東アジアの問題に意見表明をできる場にならなければならないということである。青年が日韓や東アジアに横たわる問題を見つけ、議論することで共通の価値観を形成していく手がかりを得ることもできるだろう。


3)時事性のある共通テーマの決定

そのためにユースフォーラムにおけるテーマの設定がますます重要になるであろう。ワークグループごとの行動形式は、テーマに対するより深い洞察を行うことができるという面がありながらも、ワークグループ別であるために各個別での展開という色彩が強かった。今後は、ワークグループとしての各個別での展開を行いながらも、ユースフォーラムとしての全体像を打ち出していく必要がある。その意味でユースフォーラム全体を貫くテーマの設定がより重要になってきているように思われる。

特に、日韓及び東アジアを取り巻く情勢が急激な変化を見せている現在、その年の主要な時事的なテーマを取り上げ、そのテーマの下に、ワークグループのフィールドワークや討論、公開フォーラムを行うという形式を提案したい。 また、その時事的なテーマに対して、幅広い枠内で各自が自由に取り組めるような形でメッセージ性のある、ユースフォーラムとしての共同行動を模索したい。特に、2002年のワールドカップ日韓共催を一つのメルクマールにして、ユースフォーラムにおける2002年対応のための議論を今後活性化させていきたい。

3. ユースフォーラム発展に向けた中期的テーマ

ユースフォーラム発展のための中期的なテーマについても提案する。


1)東アジアユースフォーラムを目指して

先に述べたように、東アジアにおける和解と協力の流れを作り出していく上で、東アジアの市民社会の協力と連帯は非常に重要なテーマである。その意味で、東アジアの青年と交流空間の創出は理念的な妥当性を有している。 一方で、それを具体的に進めていく際に、検討を加えなければならない問題が残っている。まず第一に、対象の問題である。東アジアにどのような青年団体・NGOがあるのか?どのように結びつきたいのか?第二に、それに対応する財政基盤の拡大の問題である。

いずれにせよ、抽象的な理念的妥当性を現実のものにするためのビジョンの策定を行いながら可能なところから始めていくべきだろう。


2)日韓NGO間の交流の拡大に向けた相互インターン制度の創出

日韓市民社会の協力と連帯を進めていく上で、日韓NGOの恒常的な交流空間を創出していくことは、ユースフォーラムが一過性の交流行事という次元を超えるために重要である。

日米NGO間では、様々な相互インターン制度がすでに用意され、NGO間の人的交流が進んでいる。また、1998年の日韓首脳会談時に発表された「行動計画」において、日韓「国民」交流の増進が唱えられ、その中でNPO関係者の人的交流の積極的促進が提案されている。

このような時流を活用し、われわれとしても日韓NGOの恒常的な交流空間を作り出していきたい。


3)自治体とのパートナーシップの確立に向けて

第3回フォーラム時に、日本側で「日韓自治体交流実態調査」が行われた。この目標は、日韓交流において自治体とパートナーシップを結ぶこと、それを「共生社会実現」など日本社会の「内なる国際化」に結び付けていくことであった。ワールドカップ日韓共催を目前に、日本の地方自治体の日韓交流への欲求は高まりつつある。

一方、韓国においては2002年地方自治体首長・議会選挙が予定されており、改革志向の多数の人材が地方自治体に進出することも可視化される状況にある。

今後われわれが、自治体とのパートナーシップの確立を進めていく上でも、その具体性・可能性・現実性を明らかにするプランが必要になる。そのために、日本側では継続した自治体調査を行うことを予定している。

4. ユースフォーラムの発展ビジョンや企画などを議論するための会議の開催

最後に、第5回ユースフォーラムに向け、ユースフォーラムの基本企画やユースフォーラムの今後の発展ビジョンなどを議論する会議の開催を提案する。今回のユースフォーラム期間中、ユースフォーラムの今後のビジョンを話し合う機会が持たれたが、ユースフォーラムの発展のためには、ビジョンの具体化やフォーラム自体の企画力などが今まで以上に問われることになる。そのために、第5回ユースフォーラム開催以前に、韓国準備委員と日本準備委員が集い、じっくり議論する場を作ることが求められているであろう。

■終わりに

「アジアで青年として生きる」、それは、東アジアとりわけ日本と朝鮮半島の間に存在する様々な葛藤を乗り越え、和解と協力関係を作り出していくために青年次元での役割を発揮するということであると私は思う。

「ヘルシンキ・プロセス」が15年という長い歳月をかけてヨーロッパの東西冷戦対決を切り崩し、ヨーロッパの和解と協力関係を推し進めたように、われわれはアジアにおける「ヘルシンキ・プロセス」を作り出す必要がある。そのためにはユースフォーラムが、日韓のみならず、日本と朝鮮半島の間の、そして東アジアの和解と協力の新しい地平を切り開く原動力にならなければならないだろう。

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